14日の午前5時28分ごろ、北朝鮮から1発の弾道ミサイルが発射されました。
ミサイルは亀城から東北東へ約800キロ飛んで、朝鮮半島東方約400キロの日本海上に落下したとみられる。飛行時間は30分間で、落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)の外と推定される。
引用元:時事通信
発射されたミサイルは新型と見られており、高度2,000kmを超えたといわれています。通常より高高度での「ロフテッド軌道」での打ち上げ実験だったとも報じられています。
今回の北朝鮮によるミサイル発射の目的は何だったのでしょうか?
■ロフテッド軌道とは?
通常、ミサイルを発射すると一旦上昇をしてから放物線を描きながら目標へ向かって落ちていきます、やり投げのやりみたいなイメージですね。
通常は「ミニマムエナジー軌道」といって距離を稼ぐためにあまり高度を取らずに発射されることが多いと言われています。
やり投げで言うと35度から45度くらいの角度で投げた方が距離が稼げるのと同じ原理だと思います。
それに反して「ロフテッド軌道」は距離よりも高さを上げる事を重視します。もちろん射程距離は短くなりますが、高さを上げる事によってミサイルのスピードが上がります。やりを真上に投げると勢いがついて地面にささりますよね、あのイメージだと思います。
ではなぜ距離よりもスピードを稼ぐ必要があるのか?というと、スピードが速ければ速いほど、ミサイルが撃墜される可能性が低くなるという事です。
高度2,000kmから落下するミサイルは毎秒約6kmの速度で落下していきます。それもさることながら、高さを出すことで迎撃ミサイルの射程を超えた場所からスピードを上げたままで目標に飛んでいくので、より迎撃される可能性は低くなるのです。
ミサイルを高高度まで飛ばすにはかなりの技術力が必要です。その意味では今回の実験は技術的に大成功と言えるかもしれません。
■今回のミサイル発射の目的は?
今回のミサイル発射には2つの目的があると言われています。
ひとつは技術開発のための実験。もうひとつは国連による制裁決議に対するアピールとの事です。
5月11日、北朝鮮は国連の各国に関して「制裁決議」をやめるように書簡を送っています。
書簡は11日付。米国は北朝鮮包囲網の構築に向け、決議の完全履行を加盟国に迫っており、書簡にはこれを阻止する狙いがあるとみられる。
引用元:時事通信
今回の発射実験はその書簡をアピールするためとも言われていますが、このタイミングではかえって立場が悪くなっているようにも思えます。
■では本当の狙いとは?
これは完全に「技術的」な実験だと思います。
以前の記事で書いたように、4月から北朝鮮はミサイル実験を一定の間隔で繰り返しています。
北朝鮮の次のミサイル発射は5月13日か14日?発射実験をまとめ
11日に韓国で北朝鮮に融和な態度を示している「文在寅大統領」が就任したばかり、また中国では習近平国家主席が主導する広域経済圏構想の国際会議が開かれていいて、北朝鮮代表団も参加をしています。
このタイミングで発射実験など行ったら、韓国との関係性は悪化し、後ろ盾となる中国の顔にも泥を塗ることになってしまいます。
それでもなぜミサイルを発射したのか?それは2週間ごとに行っている発射実験を続けることによって早く抑止力としての武器を手に入れたいという北朝鮮の焦りではないでしょうか。
■まとめ&感想
今回の弾道ミサイルの射程は約4,000kmだと言われています。これはハワイやグアムまで射程に入っていますが、まだアメリカ本土まで届くミサイルがあるかどうかは不明です。
日増しに北朝鮮を取り巻く情勢が悪化していますが、その中でもミサイル実験を繰り返すのはやはり北朝鮮の焦りだと思います。
中国からの石油の供給が止まれば国家の存続さえも危ういというのに、その中国の顔に泥を塗ってまでもミサイル開発を続けなければならない。
北朝鮮が持っている技術力の真偽は全くもって不明ですが、焦りからどんでもない暴挙を起こす可能性は否定できません。
いままでの実験では日本の上空をミサイルが飛んでいく事はありませんでしたが、アメリカ本土を狙うというのであれば日本の上空を飛んでいくミサイルを作らねばなりません。
そのミサイルが何らかの事故や故障で日本に落ちる事も無いとは言えません。
今回のミサイル発射に関しては「Jアラート」も作動しませんでした。まだまだ危機意識が低いと言わざるをえない日本で、ミサイルが落ちたら甚大な被害が出てしまう事でしょう。
そんな事にはならない早い段階で平和的な解決を望みたいものです。