10月13日放送の「人間ってナンだ?超AI入門」、第二回目の放送は「感じる」を紹介!
前回の放送は人工知能が会話する仕組みを解説しましたが、今回は人工知能が「感じる」というテーマで解説してくれました。物事の判断やデータを蓄積するためには人間で言う五感が必要になります、視覚・嗅覚・聴覚・味覚・触覚は「センサー」という形でロボットに搭載されます。ロボットが五感を手に入れる事で何ができるようになるのでしょうか。
目次
爆弾を荷物として認識しない人間
段ボールの上に爆弾の模型が乗ったものを見せて「荷物を持ってきてください」と言うと人間は爆弾を荷物の上から降ろして段ボールだけを持ってきます。一見当たり前のように思えるこの行為は人間が「爆弾」を「荷物」として認識していない思考から生み出されている行為です。この行為をロボットに行わせるには爆弾やその他の「荷物」として認識しないものを膨大にインプットする必要があります。しかし仮に荷物として認識しないもののインプットがすべて完了したとしても、今度は「荷物」を運ぶ事によって荷物以外のものが動く可能性があるかどうかをロボットに教えなければなりません。
フレーム問題
何もインプットしていないロボットは荷物の上に爆弾が乗っていてもそのまま荷物を持ってきて爆発させてしまいます。では、爆弾などの荷物とは違うものというインプットをして改良しても今度は荷物を動かすと周りにあるもの、例えば横にあるペンや荷物が置いてあるテーブルが荷物と一緒に運ばれてしまうか、荷物を運ぶと何か別の危険が無いかなどの判断に時間がかかるので結局爆発してしまいます。ロボットは全ての事柄に対して重要かそうではないかを判断する事が難しく、全ての事柄を同等に判断してしまい判断に時間がかかってしまうのが原因です。哲学者である「ダニエル・デネット」さんが提唱したこの理論はあらゆる可能性の中から瞬時に関係性のある事柄だけを選択できる能力、つまり問題解決のための適切なフレームをロボットは持つことが出来ないという事を表しています、この事がが「フレーム問題」と呼ばれています。
なぜあらゆる可能性から関係がある事柄だけ選択できるのか?
それは人間が生まれてから蓄積される「経験」というデータです。例えばドアは自分で開けないと開かない、など当たり前のように思える事を人間はどんどん経験して知識として蓄えていきます。ですから荷物を動かしても一緒についてくるのは上に乗ったものだけであり、横に置いてあるその他のものは付いてこない、荷物を動かしても電気が消えたりドアが閉まったりする可能性は無いと認識する事ができ、荷物の上に置かれた爆弾だけをどかしてすぐに荷物だけを持ってくることが出来るのです。
経験が無い知能はありえるのか?
「荷物を運ぶ」という「経験」から人間は「関係性のある事柄」を認識していきます、では経験が無い「知能」はありえるのでしょうか?「物事を理解する」=「関係性を理解する」という事、ある行動を行えばどういう結果が起こるという事を経験していかない限り本当に物事を理解する事は難しいでしょう。
視覚と触覚を手に入れたロボット
名古屋で行われたロボットコンテストでは複数のモノの中から指定されたモノだけを選んで移動させる事が出来るかを競いました。ここでロボットの荷物を判断するセンサーとなったのがカメラ(視覚)と力覚センサー(触覚)です、カメラでモノの形を認識して力覚センサーで実際に触って指定されたものかどうかをさらに確認することが出来るのです。
試行錯誤と反復練習
アメリカにあるカリフォルニア大学ではロボットアームがモノを掴む動作をひたすら繰り返す実験をしています。モノを掴むという事は実際に持ってみて持ちやすいかどうかを試さなければ理解できません、どこを持てば持ちやすいのか失敗を繰り返して学んでいく事が重要です。人間は生まれた時からこの行為を繰り返し行い、「経験」からモノのどこを掴めばちゃんと掴めるのかを学んでいきます、ロボットも同様に実験を繰り返すことによって一番モノを掴むのに良い個所を特定できるようになります。
形容詞や副詞的な概念は経験から生まれる
「大きい、小さい」や「太い、細い」といった形容詞的な概念は普通の状態を知っていないと表現することが出来ません、つまり全て標準的なイメージがあるからこそ初めて形容詞的な表現が可能になるのです。「普段とは違った事をした」などの副詞的な表現も同様で普段のイメージがあるからこそ、それと比較してどうだったかを表現することが出来るのです。ロボットが形容詞や副詞的な表現をするにはまず、標準的なイメージをインプットしなければなりません。
模倣学習によって経験を得る
何かの真似をして物事学ぶ事を「模倣学習」と呼びます。例えば外科手術用のロボットであれば実際に傷口を縫合する動作を繰り返さなくても人間の外科医の動作を見て真似れば外科医と同じことを経験できます。一度に大きな動作をまねる事は出来ませんが、ある動作を細かく分けて分析し、小さい部分から真似ていってその部分の動きをマスターします。小さい部分の動きが全て出来上がったら、全ての動作をつなげて全体的な真似をすることが出来ます。
真似をするために必要なのは自分の動きの理解
ある動作を見て真似ようと思ったらまずは自分の動きを理解しておくことが不可欠です。例えば体操選手の動きを真似しようと思っても筋力や関節の動く範囲などが全く違うので真似する事が出来ません。しかし人間ならば自分が真似できる所だけを切り取って真似る事は可能です、これは自分の身体の能力を理解しているから考えて真似する事が出来るのです。ロボットに人間と同じ動きをさせようと思うのであればまずロボット自体に何が出来るかを認識させなければならないのです。
考えて感じる?感じてから考える?
神経学者「ベンジャミン・リベット」の実験のひとつに「人間に自由意志はあるのか?」というものがあります。人が動作を起こす0.2秒前には動作を起こす意識的な決定が行われ、さらにその0.35秒前に無意識的な脳活動が行われていました。実際にものを考える時は感じてから後でその事に付いて考える方が人間の行動の多くに当てはまる事となります。意識せずに行動を起こせるという事は考えなくても行動は起こせるという事になるので、人工知能を使って行動させる部分に関しては意識という概念はあまり必要ないという事になるのでしょうか。
コピーロボットが作れる?
番組内で紹介されていたロボットはインターネットで遠隔操作できるロボット。カメラやマイク、力覚センサーなどを搭載しているので離れている所にいても実際に会話したり握手の感覚を感じることが出来ます。このデータはサーバ上に全て保管される仕組みになっているので、このロボットを使えば使うほどその使用者のデータが蓄積されることになります。未来ではその蓄積されたデータを使って使用者が死んだ後でも使用者と同様の動作や思考を表現できるようになるかも知れません。
感想&まとめ
私たちの判断や思考・動作は今までの「経験」によって成り立っているという事が良くわかりました。ストレートに考えると人間と同じ経験をロボットにさせることが出来れば同じ判断や思考・動作をすることが可能だという事でしょうか。人工知能が人間より優れている点はコピーが可能だという事です、一人の人間を作ることが出来れば同じ考えを持ったコピー人間が何体でも作れてしまいます、SF映画によくありそうなストーリーですが、すでに現実がSFに追い付きはじめているという事でしょうか。
「人間ってナンだ?超AI入門」第一回目の放送はコチラ
→人間ってナンだ?でAI(人工知能)が会話する仕組みを解説!イライザとは?